東京大学大学院医学系研究科内科学専攻ストレス防御・心身医学 吉内一浩
本稿を執筆しているのは猛暑日が連続している8月、この原稿が会員の先生方のお手元に届く頃には、すでに秋が深まっていると思われますが、秋が来るということさえも想像できません。
「あつい」と言えば、最近、本学会の若手会員の動きが「熱く」なってきています。他学会ではありますが、2014年の第19回日本心療内科学会総会・学術大会で「若手によるパネルディスカッションー次世代の心療内科へ向けてー」が企画され、活発な議論がかわされました。その流れを受けて、本年の第56回日本心身医学会総会ならびに学術講演会でも「若手医師にとって魅力的な企画運営と心身医学へのニーズ」が企画されました。
また、学術講演での企画とは別に、全国の心身医学の教室の医局長が中心となって、日本心身医学会内に「若手ワーキンググループ」を設立しようという企画が立ち上がり、当学会の戦略・評価委員会へ提案書が提出され、2015年6月に同委員会での承認が得られ、その後、理事会でも報告されました。そして、第56回日本心身医学会総会ならびに学術講演会に合わせて開催された若手医師の交流会には、総勢30名を超える参加があり、盛会であったとの報告を受けています。
私が入局した1993年頃には、心身医学領域の若手のメンバーが交流する場が既になくなっており、残念な思いをしていました。ここ数年、顔馴染みの先生も増え、また、自分より若い世代の先生方ともご一緒する機会も多かったため、現在の心身医学をめぐる問題点などを議論させていただくこともありました。特に、心身医学の問題点としては、エビデンスの構築が遅れていることが挙げられます。限られた医療資源(診療報酬を含めて)や研究費の獲得において、他分野との競争にならざるを得ないことも多く、エビデンス構築が遅れているということが発展を阻害している要因になっているのではないかという点で、多くの先生方と意見の一致を見ました。この問題点を克服するためには、心身医学系の各教室が協力してプロジェクトを進める必要があるのでないかということを繰り返しお話させていただくうちに、賛同してくださる先生方も増えてきました。
ちょうどそのような時期に、ドイツから心身医学系の多施設共同研究の論文が2本(ANTOPとANDI)出版され、心療内科学会誌の2014年1号の巻頭言「心療内科の普及・発展のために、“今”やるべきこと」で、ドイツを見習って、オールジャパンで取り組む重要性を書かせていただいたところ、様々な施設の若手のメンバーからもポジティブな評価をいただき、私自身も勇気をいただきました。そして、現在、多施設共同研究の枠組みで、いくつかのプロジェクトがスタートするに至っています。
このようにオールジャパンで取り組みが始まった時期に、若手ワーキンググループが設立されたということはとても意義が大きいと思われ、是非、応援したいと思います(本当は、私もまだまだ気持ちは“若手”なのですが・・・)。今後、若手ワーキンググループから、様々な具体的かつ斬新なプロジェクトの提案がなされることを期待しておりますが、活動には、当然、経済的な支援も必要となってきます。会員の先生方には、是非、若手ワーキンググループの活動にご支援を賜り、もちろん、時には厳しく指導していただき、本学会の予算の一部を使用する際には、ご理解をいただけますと幸いです。私自身も彼らの活動により、心身医学分野が活性化されることと、彼らに続いて心身医学分野への参加者が増えることを期待しております。
*「Journal of Diabetes Investigation」(IF 4.232):アジア糖尿病学会学会誌へ 阪本 亮先生他若手ワーキングメンバーによる論文が採用・掲載されました |
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論文タイトル: | Efficacy of acceptance and commitment therapy for people with type 2 diabetes: Systematic review and meta-analysis |
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