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コラム

心身医学

心身医学とがん医療の関わり

「心身医学」とは“病”をみるのではなく、“病をもっている人間”を診る、その人の心理社会的背景からその人を取り巻く環境を含めて、心身両面から、その患者さんが“病”とつきあいながら今後の人生をどうやって切り開いていくか、を一緒に考え、実践していく学問です。また、ひとたび“病”にみまわれると、どこかが痛いというような身体的苦痛だけではなく、心理的な苦痛も、仕事や経済面での社会的苦痛も、そして自分の人生とどう向き合っていくかというスピリチュアルペインも加わります。このような苦痛が相互に関連しあって、「トータルペイン(全人的苦痛)」をもたらします。したがって、これに対処するには、医療側も全人的医療を実践していく必要があります。

そのトータルペインをもたらす代表的な疾患が「がん」です。1981年以来、日本人の死因の第1位は悪性腫瘍(がん)が占めるようになり、一生涯のうちに2人に1人はがんになることが統計上、示されています。すなわち、がんは今や「国民病」ともいえる時代になりました。このため、わが国では2007年にがん対策基本法が施行され、2012年からは第2期がん対策推進基本計画で、「がんになっても安心して暮らせる社会の構築」という社会的側面に着目した目標も明記されています。

がんに関わる医療としては、サイコオンコロジー(精神腫瘍学)や緩和ケアがあります。サイコオンコロジーって、ちょっと聞き慣れない言葉だと思いますが、1971年に米国に端を発し、“がんが心に与える影響”と“心ががんに与える影響”の双方向性の研究・臨床実践を通じて、がん患者さんのQOLの向上、がん罹患率の減少、生存の延長をはかろうとする集学的学問体系です。一方、緩和ケアは「生命を脅かす疾患に伴う問題に直面する患者と家族に対し、疼痛や身体的、心理・社会的、スピリチュアルな問題を早期から正確にアセスメントし解決することにより、苦痛の予防と軽減を図り、生活の質(QOL)を向上させるためのアプローチである」と2002年にWHOが定義しています。心身医学は心身相関の評価やアプローチを通して、全人的医療の実践を目指し、これらのサイコオンコロジーや緩和ケアを包括しています。また、医療者-患者・家族間、多職種の医療者間のコミュニケーションを円滑にして、全人的アプローチを実践していくためのチーム医療の要となるものです。

高齢化社会を迎え、ますます増えていくであろうがん患者さんに対しても、心身医学の見地から少しでもお役に立てるようにと願いながら、日々研鑽を積んでいます。

近畿大学医学部内科学教室 心療内科部門
小山 敦子

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