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コラム

心身医学

こころとからだ

あらゆる身体疾患の発症には、生物学的な要因と環境的な要因の双方が関係します。広義の意味での環境的要因には、例えば、有害物質などの物理的な要因の他に、対人関係の悩みなどの心理社会的な要因も含まれます。環境因が全く関与しない身体疾患は、おそらく存在しないのではないでしょうか。様々な身体疾患において、ストレッサー(ストレス要因)が強いほど、発病率が増加し、治療反応も悪くなりやすいことが知られています。強いストレス要因に長期間さらされると、うつ病などの精神的不調を生じることがありますが、たいていの場合、その前段階として身体的不調が現れます。その代表が頭痛、めまい、動悸、息苦しさ、震え、全身のしびれや痛み、便秘・下痢などのいわゆる自律神経症状と呼ばれる症状です。ストレス要因に対して、まずは身体が反応して、自律神経の過緊張状態が引き起こされ、そのまま放置されれば精神的不調に移行するかもしれないという警告、すなわち「黄信号」が出ている状況にあると言えます。このように、精神状態と自律神経系機能、言い換えれば、こころとからだは密接に連動しており(心身相関)、切っても切り離せない関係にあります。

一方、医療技術が進歩すればするほど、広範な医学領域は専門分化され、高度な診断機器を用いた迅速で正確な診断と高度な専門的治療が、医療現場に求められる最重要課題となります。このような現代の医療状況であるからこそ、なおのこと、身体疾患をこころとからだの両面からアプローチする必要性が高まっていると言えます。心身医学は、まさに、このアプローチを実践するために確立された医学領域であり、現代の専門分化した高度な医療の間隙を埋める重要な役割を担っていると考えられます。

ところで、こころの問題を扱う診療科として、どんなところがあるのでしょうか? 昨今は、総合病院や医院・クリニックに様々な診療科名が標榜されていて、受診される方にとっては非常にわかりにくい現状があります。「心療内科」「精神科」「神経科」「精神神経科」「メンタルヘルス科」「メンタルクリニック」「こころのクリニック」等々枚挙に暇がありません。では、心療内科医と精神科医の違いは何でしょうか? 心療内科医は、元々身体的疾患の診断と治療を専門としながら、こころの問題に十分配慮しながら診療を進めている医師であり、精神科医は、元々精神障害の診断と治療を専門としながら、身体的な問題に配慮しながら診療を進めていくことができる医師です。両者ともベースは異なっていても、心身相関の問題を扱う点では共通しており、この領域に十分精通しています。例えば、一口に内科医と言っても、それぞれ得意とする専門分野があるように、心身医学に関わる疾患の診断や治療も、その内容に応じて、それを得意とする精神科医、心療内科医のどちらでも対応が可能であると考えています。一例を挙げると、慢性疼痛に長年苦しんでおられる方がペインクリニックから精神科に紹介されて、「痛みを精神的な問題として片付けられた」とショックを受けている場合がありますが、精神科医であっても、心身相関の観点に立った治療を得意としている医師は少なくありません。ですから、あまり表面的な標榜診療科名にとらわれず、自分が苦しんでいる問題の解決に向けて最も適切な医師を紹介してもらう(あるいは探す)ことが大事ではないでしょうか。

言うまでもありませんが、患者さんが主治医を信頼できる関係になければ、医療として治療の最大効果は生まれません。まさに、心身相関の醍醐味はここにあると言っても過言ではありません。私たちは、診療が医師と患者さんとの間の共同作業であることを念頭に置きながら、お互いに尊重し合える関係を保ちたいと願いながら、日頃、診療に携わっています。

北海道大学大学院 医学研究科 精神医学分野
久住 一郎

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